経営コンサルの割安株分析

現役経営コンサルタントが中長期保有を前提に中小型株を中心に分析。自身の専門性や調査・分析範囲(能力)に限界がある中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との意見交換を行うことで、割安株への投資を実現することが目的です。

スクロール(8005)企業分析②

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さて、前回の続きです。
(前回行いましたスクロールの企業分析はこちらになります)

www.con-invester.com

戦略志向

AmazonなどのECプラットフォーマーが圧倒的な力を見せつける中、カタログ媒体や、カタログ媒体の延長として始めたECサイトで戦っているスクロールの現状が苦しいことは前回見た通りです。

今回はそんなスクロールがどんな戦略を志向しているのか、そしてその戦略はイケているのかどうかについて見ていきたいと思います。

スクロールは中期経営計画にて、自社を「複合通販企業」と定義しております。

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一方、前回見た通り、通販事業で安定して収益を獲得できているのは「インナー事業」のみで、むしろ通販事業によって蓄積してきた通信販売事業者やEC事業者向けのプロモーション支援、フルフィルメント支援、システム構築支援などの「ソリューション事業」が大きな収益の柱になっています。

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彼ら自身が謳っている強みも、出ている結果から見ると大した強みではないと言えるでしょう。

左上の「安定した顧客基盤」も提携している生活協同組合や全農の顧客基盤であって、スクロールの顧客基盤ではありません。
(生協の宅配チャネルでカタログを配布しているだけです)

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また、生協自身についても、今後Amazonフレッシュやそれに対抗するセブンなどの巨人に淘汰されていく可能性が高いと想定されます。
(とは言え、45年間も提携関係にあるとはすごいですね・・・)

右上と右下については、あの手この手を打っているようですが、なかなか厳しいのが現状です。

BASEなどの優れた企業のお蔭で、ネットショップ事業者の参入障壁が著しく低下している昨今において、既存のビジネスモデルはなかなか厳しいように思います。

thebase.in

さて、そうなると一つの方向性が「ソリューション事業」プレーヤーになるという戦略です。

ネットショップ事業者の参入が容易になり、事業者数が増えれば増えるほど、こうしたインフラ回りのニーズが増加していきます。

ここは先行者としてのノウハウが蓄積している部分ですし、すでにコールセンターやシステムなどのアセットも保有していることから、事業展開上の強みになってくるような気がします。

とは言え、前述の通りスクロール自身は「複合通販企業」を目指しているようなので、すぐには「ソリューション事業」に舵を切ることはないでしょう。

ですので、株価が下がっていくのを横目に、「ソリューション事業」に舵を切るような動きがあれば、そのタイミングで買いに行くというのが一つの投資戦略ではないでしょうか。

※少し古い記事ですが、「ソリューション事業」に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、こちらも併せてご覧ください。

netshop.impress.co.jp

目標株価

最後に簡易的ではありますが、目標株価について書いておきます。
「EBITDA成長率」「EBITDA倍率」という2つ変数で目標株価について算出したいと思います。

前提

EBITDA Margin :FY2017値である9.5%が今後も一定と仮定
Net Debt :FY2017値である-2.8億円(無借金経営)が今後も一定と仮定
少数株主持分 :FY2017値である0.8億円が今後も一定と仮定
発行済み株式数 :2018年4月11日現在の34,818,050株が今後も一定と仮定

ケース

EBITDA成長率 :FY15-17の売上高CAGRである-3.8%、FY14-17の売上高CAGRである-4.8%、FY16-17の売上高CAGRである-6.3%の3ケース
EBITDA倍率 :現在値である5.9x、類似企業である千趣会の6.9x(EBITDAのみFY16値を使用し算出)、類似企業であるベルーナの11.3xの3ケース

試算結果

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最大ケースでは672円となりました。

ただ、これはかなり厳しい水準だと考えており、このままの戦略を続けている限り、400円前後が妥当な水準じゃないかなと思います。

「EBITDA倍率が高い」ということは「それだけ成長が見込まれている状態」とも言い換えられるので、既存の事業、業績では既存のEBITDA倍率も決して低いとは言えないと思います。