2017年10月27日、考えさせられるニュースが流れました。
そのニュースとは「第三者割当により発行される新株式の募集に関するお知らせ」と称して、日本アセットマーケティングがドン・キホーテHDを割当先とする第三者割当増資を行うというものでした。
増資によって何が起きるのか?
この増資によって、一株当たりの利益が希薄化します。
そもそも株式とは利益を受け取る権利であり、企業が稼いだ利益を保有株数に応じて分配したものが一株当たり利益になります。
(厳密には利益剰余金として企業内に残すものや、借入金の返済などを差し引いた分が配当として分配されますが、分かり易くするために省略します)
分かり易い前提として、株主1人が1株保有している企業があるとします。
その企業が増資を行うと、利益を分配する人が増えることになります。
しかし残念なことに、分配する利益はその時点では増えません。
なので、結果として株主一人当たりの利益は減少することになります。
これが希薄化です。
大事に株を持っていた株主からしたら堪ったものじゃありません。
それでも増資が行われる理由
それでも増資が行われる理由、或はそんな副作用がある増資が正当化される理由として以下の二つが必要になります。
①増資により獲得した資金を活用して利益が増加すること
②財務状態がよろしくない状況であること(=増資でなければいけない理由)
①増資により獲得した資金を活用して利益が増加すること
希薄化によって一株当たりの利益が減少した場合でも、増資により獲得した資金を活用してその分利益が増加すれば、結果として一株当たりの利益は減少しません。
ともすれば、増資によって長期的に一株当たりの利益が増加するという結果だってあり得るわけです。
企業側がどれだけ本気でそう考えているかは分かりませんが、それでも増資を行う理由としてはそうした成長への一手であるから仕方がないよねと言った面があります。
②財務状態がよろしくない状況であること
「でも資金が必要なら別に希薄化する増資じゃなくて銀行借入でもよくない?」
そうです。その通りです。
一般的に銀行に支払う金利より、株主に払う配当金の方が高くなるはずなので、銀行借入した方がコスパが良いわけです。
なのでそれでも増資を選択する=銀行借入ができない(又はこれ以上財務状態が悪化すると格付けが下がる)ような状況というわけです。
日本アセットマーケティングは増資が必要だったのか
上記を踏まえた時に、日本アセットマーケティングにとって、本当に増資が必要だったのかというのが僕の中で大きな問いとして残っていました。
本増資の目的として「財務体質を安定化しながら、新規収益物件又は開発用地としての不動産を取得し、中長期的な視点での当社のテナント賃貸事業及び不動産管理事業の発展を通じた、企業価値の向上やさらなる株式価値の向上につなげる」こととしています。(プレスリリースより加工)
まぁ財務体質がよろしくないことは事実なので、資金調達をする場合は増資になることは違和感ないのですが、やはり引っかかるのは資金調達をする必要があったのかということです。
2017年3月期の日本アセットマーケティングの営業キャッシュフローは137億円もあるわけです。
これだけのキャッシュを安定的に稼げる事業があるわけですから、一旦投資を止めて財務体質を強化するという選択肢もあったわけです。
結局どの程度希薄化するのか?
増資前に51,285万株だった株式数が26,179万株増えて、77,465万株になりました。
つまり、既存の株式価値は理論的に33.8%減少するわけです。
これを正当化するためには、3割以上も今から利益を増加させる必要があります。
果たしてそんなことが可能なのか。可能だとしても、そんなに攻め急いで万が一取得した不動産の価値が下落し、減損処理なんてなったら益々株価が下落するのではないか。
そんな懸念が浮かび上がる中で、今回の増資についてはどうしても理解できないわけです。