経営コンサルの割安株分析

現役経営コンサルタントが中長期保有を前提に中小型株を中心に分析。自身の専門性や調査・分析範囲(能力)に限界がある中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との意見交換を行うことで、割安株への投資を実現することが目的です。

遠藤製作所(7841)企業分析②

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さて、前回の続きです。
(前回行いました遠藤製作所の分析はこちらになります)

www.con-invester.com

株価・倍率

株価は昨年末から盛り上がり始め、今年の3月に最高値の845円をつけます。
約2年で株価が2.6倍になった計算です)
現状は最高値から約3割下落した水準で推移しています。

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この事業ポートフォリオにミートする競合がいないので、金属加工部品又はゴルフ用品を展開し、売上高が100~200億円規模の企業とPERについて比較してみました。
(キャッシュの持ち過ぎで遠藤製作所のEVがマイナスのためEBITDA倍率ではなくPERを使用)

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完全な競合でないため、これだけで割安と決めつけるのは危険ですが、少なくとも遠藤製作所の株価は割高ではないと言えそうです。

戦略志向

目標株価に入る前に遠藤製作所がどのような戦略を描き、今後成長が期待できるか否かについて見ていきたいと思います。
前提として各事業の共通点は製造に使用される鋳造技術で、事業間の結びつきは弱いです。
ビジネスモデル上、各事業が存在することでシナジー効果を生み出しているというよりも、技術の横展で事業を拡大しているという感じです。
新事業のメディカルデバイス事業なんかもまさにそれですね。

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ですので、教科書的に言えば儲かっていない事業を縮小し、儲かっている事業(儲かりそうな事業)に経営資源を集中させるというのがやるべきことです。

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数値だけみて判断するのであれば、ボラティリティが大きく安定しないゴルフ事業を縮小し、その他2事業に注力なのですが、最大雇用を抱える(全社従業員の64%)ゴルフ事業を縮小するのは少し現実的ではないような気がします。
(配置転換をしながらなんていう方法もありますが、当然ながら従業員からの反発も予測されとってもハードルが高そうです)
となると、他の2事業の成長云々はあれど、ゴルフ事業がどうなるかというのが遠藤製作所の今後を考える上で非常に重要なポイントとなります。

ゴルフ事業の成長余地

ゴルフ事業はゴルフクラブヘッドのOEMです。
有価証券報告書を確認すると、受託元がブリヂストンやダンロップ等の大手ゴルフ用品メーカーであることが分かります。
OEMの宿命ですが、運命は受託元の動向に大きく依存します。
受託元の業績を見ると、売上高こそ横ばいですが、反発係数に関する規制などの影響からか決して儲かっているとは言えなさそうです。

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(ブリヂストンスポーツは非上場のため一部情報のみ記載)
このような状態から脱却するためにゴルフ用品メーカーも海外市場(北米やアジア)への進出を志向しているようなので、大きく落ち込むことはないと思いますが、成長が期待できるような事業ではなさそうです。

目標株価

最後に簡易的ではありますが、目標株価について書いておきます。
遠藤製作所のケースでは、企業価値がマイナスであるため、これまでのように「EBITDA成長率」「EBITDA倍率」という2つ変数では当然マイナスバリューとなってしまうので、今回は「Net Debt(Net D/Eレシオ)」「EBITDA倍率」の2つを変数としたいと思います。

前提

売上高、EBITDA margin、少数株主持分

FY2017値が一定と仮定

発行済み株式数

7月27日時点と同様に9,441,800株と仮定

ケース

Net Debt(Net D/Eレシオ)

現状、実質無借金でNet D/Eレシオはマイナスになっています。(ノーレバレッジ)
競合並みにレバレッジ効果は活用できるという前提に立ち、PERの競合比較で見た、金属加工部品又はゴルフ用品を展開し、売上高が100~200億円規模の企業平均値0.21倍、中央値の0.11倍、両値の平均値である0.16倍の3ケース
(このNet D/EでNet Debtを算出すると、15.1億円、22.2億円、29.2億円になります)
ここで新たに借金で得た資金は全額株主還元に企てるという前提です。
(借金をして株主還元をする??となった方もいらっしゃるかもしれませんが、米国なんかではごく一般的な資本政策です。この辺はまたレポートします)

EBITDA倍率

Net D/Eレシオ同様に金属加工部品又はゴルフ用品を展開し、売上高が100~200億円規模の企業のEBITDA倍率の最小値2.5x、平均値4.1x、両値の平均値3.3xの3ケース

試算結果

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最大ケースは955円となりました。

僕個人としてはこの水準は極めて現実的な水準だと思っています。
そこには勿論保有現金をしっかりと株主に還元するという前提が付きますが、時代の流れとしてコーポレートガバナンスが叫ばれていることに加え、主要株主に名だたる金融機関いることからコーポレートガバナンスが利きやすく正常な資本構成に向かう可能性が高いと想定されます。

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決してビジネスモデルが優れているわけではありませんが、今後は比較的安定した業績の推移が予測され、且つ資産ベースで見て割安であることからBuyであると考えています。