前回の三東工業社の反省を活かし、キャッシュリッチ企業として抽出された企業の内、収益性(EBITDA margin)が高い企業順に分析を行いたいと思います。
(抽出したキャッシュリッチ企業はこちらになります)
企業概要
という訳で、今回は遠藤製作所(7841)を分析したいと思います。
遠藤製作所は東証JQS上場で、時価総額は57億円(2017年7月26日時点)です。
新潟県に本社を置き、鋳造事業、ゴルフ事業、ステンレス事業の3事業を展開しています。
割合(売上ベース)としては、鋳造事業49.5%、ゴルフ事業39.8%、ステンレス事業10.8%となっています。
鋳造事業は自動車や農耕機等の鍛造部品の製造・販売を
ゴルフ事業ではゴルフクラブヘッド(アイアン、メタルウッド)の製造・販売を
ステンレス事業では主にOA機器等に使用されるステンレス製極薄管(メタルスリーブ)を製造・販売を行っているようです。
時価総額と保有キャッシュ(Net Cash)
さて、前回と同様に一度どのくらい金持ちなのか確認しておきます。
FY2016 2Qからの約半年間は時価総額を保有キャッシュが上回っていますが、それ以外の期間は時価総額が上回っている状況です、
ですが、直近では状況が一変し、時価総額が25%も下落した一方で、保有キャッシュが30%も増加した結果、時価総額が保有キャッシュを上回る状態となっています。
いずれにせよ、時価総額が50~70億円規模の企業がNet Cashを50億円以上持っているのは相当お金持ちと言えそうです。
業績
売上高はFY2013から減少傾向が続いており未だ下げ止まらずといったところです。
一方の営業利益はFY2014からV字回復を遂げ、FY2017は直近7年で最高水準まで回復しています。
この回復が一過性のものなのか、はたまた持続可能なものなのかについて、もう少し深堀してみます。
業績悪化の背景は「円安」
セグメント別の営業利益を見てみると、全社業績が落ち込んだFY13-14に掛けてゴルフ事業が大きく赤字を出していることが分かります。
(上記グラフには本社コストは含まれていない)
遠藤製作所のゴルフ事業は国内で企画を行い、タイの自社設備にて生産を行っています。
顧客の多くが国内であることが想定される中、ちょうどこの時期に火を噴いた”黒田バズーカ”による「円安」の悪影響をもろに受けてしまったわけです。
直近は黒田バズーカも虚しく、FY13-14水準に比べて円高に動いており、且つ当期間に一定の合理化を進めたことから収益性が向上しています。
一方、ゴルフ事業が苦しむ中で、しっかりと次の収益の柱であるステンレス事業を育成してきていました。
FY13では1億円であった営業利益が、FY17では4億円と4倍増を実現しています。
ちなみに、ゴルフ事業は「円安」の問題以前に、減損対象となるような資産を抱えていたことから、継続的に膿出しを行っていました。
売上成長については次回分析を行いますが、コスト低減という目線で見た時に、ゴルフ事業の合理化・膿出しにより企業としてより筋肉質化していると想定されます。
また、苦しみながらもこれだけキャッシュを溜め込んでいるというのがすごいですね。
次回は戦略志向や成長可能性、競合比較を踏まえ、目標株価について分析を行いたいと思います。