さて、前回の続きです。
(前回行いましたサンセイの分析はこちらになります。)
事業構造
ゴンドラ・舞台セグメント
まずサンセイの主力セグメントであるゴンドラ・舞台セグメントです。
日本の建設需要は2020年東京五輪を境に減少していくことが予測されていますが、ゴンドラの場合は既に建っている建物をメンテナンスする企業に販売するため、建設需要ほどの落ち込みはないと想定されます。
このゴンドラはかなりニッチ市場であると想定され、サンセイのような当該セグメント売上高が30億円前後の企業でも、かなりの大型ビルへの導入実績を持っています。(HPの導入実績より)
どうしてもビルごとに求められるスペックが異なる中で、一定の製品カスタマイズが必要になります。
カスタマイズが必要になることで製品の付加価値が上がり、その結果当該セグメントのROSが直近足元では15%を超える水準になっています。
さらにカスタマイズが必要なため、他社へのスイッチハードルが高くなり、顧客維持機能が働くという構図です。(その結果、一度入り込めば後は更新需要に合わせて継続的に販売が見込めるという形です)
一方で、他社の顧客を奪うことも難しいということも意味しますので、現状から成長していくという絵が描き難いとも言えそうです。
海洋セグメント
次に船舶修理や魚礁、標体・浮体式灯標を展開する海洋セグメントです。
前回も記載した通り、海洋事業の利益率は非常に高いです。
多くのビジネスがそうであるように、船舶においても製造よりもアフターサービスの方が利益率が高いようです。
一方で、市場規模自体は「船舶製造・修理業、舶用機関」で見ると2010年を境に減少傾向にあります。
実際問題として、前回も記載しましたがサンセイの海洋セグメントもどちらかというと減少している状況ですので、折角利益率は高いですが、将来性の高い事業と言えなさそうです。
あと、一番気になっていることですが、主力のゴンドラ・舞台セグメントと海洋セグメントのシナジーが素人目から一切理解できないということです。
元々合併を境に両事業を手掛けることになったという背景からも分かる通り、両事業のシナジーは一切ないのかもしれません。
目標株価
最後に簡易的ではありますが、目標株価(ターゲットはFY19)について書いておきます。
前提
EBITDA Margin :FY2016値である11.2%が今後も一定と仮定
Net Debt :FY2016値である-2億円が今後も一定と仮定(実質無借金)
少数株主持分 :FY2016値である0億円が今後も一定と仮定
発行済み株式数 :2017年6月6日現在の8,987,700株が今後も一定と仮定
ケース
売上高成長率 :FY15-17のCAGRである-1.5%、FY13-17のCAGRである-0.2%、ゼロ成長の3ケース
EBITDA倍率 :2017年6月6日値である2.9x、競合平均と現在値の平均値である3.9x、競合平均である4.9xの3ケース
試算結果
最大ケースでは、384円と算出されました。
但し、これはEBITDA倍率が競合水準まで切り上がった場合です。
前回も書きましたが、業界としてEBITDA倍率が低く、成長が期待されていない、見放されている業界でもあります。
なので、あまり過度な期待は禁物です。
急激な業績の縮小もなさそうなシナリオですが、将来の種蒔きができていない(少なくとも一般投資家に分かる範囲では)状況ですので、縮小市場における次の一手が見えるまではいくらEBITDA倍率が割安でも、投資には踏み切れなさそうです。
(この企業規模・事業環境で実質無借金であり、資本投下して事業を拡大していくという志はなさそうな気がします。。。)