この1~2週間くらい、再び大塚家具の今後について記載される記事が増えてきたので、日経ビジネスの下記の記事についての見解を述べながら、今後の動向について今一度確認したいと思います。
真の差は"強み"が明確か否か
まず、大塚家具については上記の記事を含めて寝ぼけた分析が多いように思います。(少々過激な表現ですが、大塚家具の現状をしっかりと見つめるためにも、敢えて過激な表現を使っています。)
まず、上記の記事では、「回転率」と「商品原価」について言及されています。
大塚家具の業績が悪化した主な理由は「戦略の失敗」です。数字的に見た場合、「商品の回転率」にその差が大きく表れています。
(中略)
回転率を計算しますと、大塚家具は0.66年(8.0カ月)分、ニトリは0.20年(2.4カ月)分となります。ニトリの方が、商品の回転が大幅に速いことが分かりますね。
大塚家具とニトリではそもそも価格帯が異なるため、回転率が異なるのは当然です。(カジュアルなパスタ屋と高級イタリアンで回転率が異なるのと同じです)
つまり、スーパー当たり前のことをそれっぽく語っているだけです。
コンサル的に言うとSo What?(だから何?)です。
売上原価率を計算しますと、大塚家具は46.6%、ニトリは45.8%。ほぼ同じです。
ただし、回転率が大きく異なるため、ニトリの方が非常に効率的で、その差が圧倒的な利益の差となっているのです。
大塚家具とニトリでは原価率が高い理由が異なり、その理由が重要です。
大塚家具の場合は中高価格帯のものを「ブランド」という付加価値を乗せて販売しているので、その分原価率が低くなります。
一方、ニトリは低価格帯でもSPAモデルにより中間マージンを削減できるので、その分原価率が低くなります。
「ニトリの方が非常に効率的で、その差が圧倒的な利益の差」になっているのではなく、SPAモデルによる「円滑な事業活動(調達~販売まで)」や「顧客ニーズを踏まえた製品開発」が両社の収益の差を生んでいるのです。
もっと言えば、ニトリがSPAモデルという強みがある一方、大塚家具は強みが明確になっていないため、両社に大きな差が生まれているのです。
大塚家具への過度な期待
上記の他にも下記のような期待が散見されます。
ただし、先にも触れたように現預金は急減していますから、今後は銀行などからの借り入れや社債を発行しながら新たな投資をしていくのではないかと思います。これにより銀行や外部のアドバイスをこれまで以上に得られるようになるかもしれませんね。
目の前にあるファクトを兎に角ポジティブに捉えようとしていますが、実際このままの状態では銀行はお金を貸してくれなくなりますし、格下げを受けて社債の利率も高騰します。
また、大塚家具規模の企業で銀行員から経営アドバイスを貰うなんて聞いたことがありません。
以前の記事でも述べましたが、大塚家具に必要なことは自社の"強み"を明確にし、"強み"に基づく戦略を再構築することです。
3月13-14日に大塚家具の分析を行った際に、大塚家具の株価について下記のように書きました。
このまま「短期的に効果の出そうな事は何でもやります」状態が続けば、業績の改善は遠のく一方であり、当然株価も切り下がっていくことが予測されます。
まさに予想通りの展開でこの一か月半でズルズルと切り下がっています。
今後についても、個人的な見方は一か月半前と変わりません。
MBO狙いで買い持ちしておくのは1つのオプションですが、このまま「短期的に効果の出そうな事は何でもやります」状態が続けば、業績の改善は遠のく一方であり、当然株価も切り下がっていくことが予測されます。