経営コンサルの割安株分析

現役経営コンサルタントが中長期保有を前提に中小型株を中心に分析。自身の専門性や調査・分析範囲(能力)に限界がある中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との意見交換を行うことで、割安株への投資を実現することが目的です。

フリーキャッシュフローについて考えてみる

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新年一発目から小難しい内容で大変恐縮なのですが、一度「フリーキャッシュフロー」の取扱いについて考えてみたいと思います。

そもそも考えるに至った背景

本日、朝からスタバBook&Cafeに籠って、気になっていた本をひたすら読み漁りました。
そこで読んだ「イノベ株を狙え!」の中で、銘柄選定基準として「フリーキャッシュフロー」が頻出していました。

ちなみに、少し脇道に逸れますが、「イノベ株を狙え!」は非常に良書でした。

本書で言うイノベ株とは、所謂IoTやAI、VR/AR関連の銘柄ではなく、新たな価値を消費者に届けた銘柄、既存事業からピボットして新たな収益元を確立した銘柄、グローバルニッチ銘柄であり、それらの銘柄が幅広く紹介されています。
それも、ただ銘柄名を紹介するだけではなく、なぜその銘柄がイケているのかを、"簡潔に"解説されています。
まだ読んでいない方は是非目を通してみてください。

さて、話を戻します。
そんな良い本だったので、ふっと思ったわけです。
「自分の企業分析の中でもフリーキャッシュフローを見なくていいの?」と。

フリーキャッシュフロー は「企業が自由に使えるお金」

そもそもフリーキャッシュフローとは「税引き後営業利益に減価償却費を足し戻し、事業運営に必要な運転資本や設備投資の増加額を差し引いたもの」で、企業が自由(フリー)に使えるお金になります。

式で表すと、
フリーキャッシュフロー=税引き後営業利益+減価償却費-追加設備投資額-運転資本増額
になります。

EBITDAは、営業利益+減価償却費なので、ちゃんと税を考慮したEBITDAに設備投資額と運転資本の増減を加味したものがフリーキャッシュフローということになります。

それぞれのメリット・デメリット

まず、EBITDAのメリットは簡易さです。
営業利益+減価償却費ですから、有価証券報告書を見れば瞬殺で分かります。
加えて、ワンタイムの特別損益を除いて計算しているので、リアルな稼ぐ力が分かります。
一方で、特に設備投資額を無視するのは、企業の姿を誤って映してしまう可能性もあります。
例えば、毎年既存設備の維持に多額投資が必要な事業であれば、それが除外されて数値が出てしまうので、実態としてはちょっとしかキャッシュを生んでいないのに、あたかも多額のキャッシュを生んでいるように見えてしまう訳です。

一方、フリーキャッシュフローのメリットは、EBITDAの裏返しで、税金から設備投資、運転資本の増減まで、自由に使えるお金(生み出したキャッシュ)を正確に把握できるところです。
しかしながら、フリーキャッシュフローは計算が面倒なことに加え、EBITDAでは除外していたワンタイムの特別損益が含まれているため、それはそれで実態を表していないということもあるわけです。

じゃあ、両方使おうよ

株式投資の世界において完璧な指標はないので、一つの指標による一本足打法は危険です。
使う指標は多いに越したことはありませんが、それも自身の労力とこだわりとの相談でしょう。
僕自身は、多少労力が上がっても、EBITDAもフリーキャッシュフローもどちらも捨てられないので、今後は両方使いながら分析していきたいと思います。

やっぱり、キャッシュを生み出せる企業は魅力的ですからね。ちゃんと実態を掴んでいきたいと思います。