さて、前回の続きです。
(前回行いましたクックパッドの分析はこちらになります)
戦略志向
クックパッドの戦略志向は①「"料理"への集中」と②「海外展開」でしょう。
①「"料理"への集中」
これは前回も書きましたが、「お家騒動」における主要な論点でした。
というわけで、既存の"料理"と関係性が薄い事業は超ハイペースで売却しています。
担当者はさぞ忙しかったでしょう。
少しここで立ち止まって考えたいのが、"料理"に集中したクックパッドの次の一手。
彼らは国内だけでも、6,000万人の月間ユーザーがいて、その膨大なユーザーの検索履歴(食べたい・作りたい)のデータが日々蓄積されていきます。
となると、これを使って新しいビジネスができるわけです。
と、思って調べてみると既に蓄積した膨大なデータを販売する新事業を行っているようです(IR資料に書かれていない!)。
検索履歴は、食品メーカーや調理器具メーカー、小売店なんかに販売されているようです。
購入した企業はそのデータに基づいて、新商品を開発したり、仕入れを最適化しているようです。
6,000万人って日本人口の半分ですからね。クックパッドはお金を払わずにマーケット調査をしているようなものです。これはすごい。
IR資料では紹介されていませんが、経済産業省の資料によると既に百数十社がデータを購入しているようです。
(30万円/月(HPより)と仮定すると、約3-5億円/年の売上になっています)
この事業の魅力を書こうとするとブログ一本分くらいになりそうなので割愛しますが、興味がある方は「たべみる」で検索してみてください。
②「海外展開」
クックパッドのことを勝手に超ドメスティック企業だと思っていましたが、既に日本以外の国でも3,500万人程度の月間ユーザーがいるようです。
IRでも進出する国ではNo.1になるとぶち上げています。
これは、日本ではもう誰にも負けないという自信の表れなのでしょう。
「いやい、待ってくれ。料理動画に攻め込まれているんじゃないのか?」
たしかに。ここは僕自身も少し慎重な見方をしていました。
が、実際にユーザーに聞いてみると(僕自身は料理をしないので)「動画はエンタメ。実際に料理を作る参考書としては使いにくい」と。
どうやら、じっくり見たいのに、再度確認したいのに、時間と共に流れていってしまう動画は参考書としては不親切らしいです。
なので、一部ユーザーは取られても、クックパッドが焦る程の取られ方はしないと予測しています。
ちなみにクックパッドも料理動画はやっていはいるみたいですね。
目標株価
最後に簡易的ではありますが、目標株価について書いておきます。
「EBITDA成長率」「EBITDA倍率」という2つ変数では当然マイナスバリューとなってしまうので、今回は「Net Debt(Net D/Eレシオ)」「EBITDA倍率」の2つを変数としたいと思います。
前提
EBITDA Margin :FY2016値である52.5%が今後も一定と仮定
Net Debt :FY2016値である-189億円が今後も一定と仮定(なんと実質無借金!)
少数株主持分 :FY2016値である0.3億円が今後も一定と仮定
発行済み株式数 :2017年11月8日現在の107,188,800株が今後も一定と仮定
ケース
EBITDA成長率 :FY15-18予測のCAGRである1.5%、その倍である3.0%、ゼロ成長の3ケース
EBITDA倍率 :2017年11月8日値である6.9x、類似のWebメディアを運営する企業平均である14.2x(厳密な競合が上場企業にいないため・・・)、両値の平均である10.5xの3ケース
試算結果
最大ケースでは、1,454円と算出されました。
成長が鈍化しているとはいえ、圧倒的な収益性を誇るビジネスです。
かつ独占的な地域を確立していることから網羅性の高いデータの収集を実現できている点、実際に既にデータ販売において数億円の売上が出ている点が非常に好印象です。
何より、マルチプルが低い。(=割安)
これは「買い」です。
が、バブルとも取れるこの相場ですから、今年中に投資し始めるくらいの感覚で待ちたいと思います。