さて、先日EBITDA倍率がPERよりも優れた指標であることを言及しました。
EBITDA倍率は特別益・損の非連続的な収益インパクトを除外した値であるため、PERのように特別益・損に振り回されることがなく、割安割高の判断精度が高いと言えます。
(詳しくはこちらをご覧ください)
但し、EBITDA倍率も万能でありません。
EBITDA倍率が除外できない”死角”を理解することで、より精度の高い企業分析を実現することができればと思います。
営業利益 ≠ 売上総利益 – 一般管理費
EBITDAは営業利益 + 減価償却で算出されます。
その営業利益ですが、多くの方の認識では売上総利益から一般管理費を差し引いて算出すると理解していると思われますが、実は「その他収益・費用」という項目も含まれています。
(「その他収益・費用」の定義について少しググってみたのですが、見当たらなかったので、どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら補足頂けますと幸いです)
(※スカラ有価証券報告書より抜粋)
スカラ(4845)の事例
スカラは2016年5月16日から段階的にソフトブレーン株の取得を行っていました。
その後、スカラによる買い増しを期待した買いが入り、ソフトブレーン株が急騰。
最終的にスカラがソフトブレーン株40%を取得し、連結子会社化しました。
その結果、スカラには「段階取得に係る差益」が発生しました。
金額規模で言うと約26億円で、FY16のスカラの純利益が7.7億円だったことを踏まえるととんでもない額であることが分かります。
そんなとんでもない規模の差益が「その他収益」として営業利益に加算されるわけです。
ちなみに営業利益は前年同期比で+591.8%となりました。
営業利益が増加すれば、当然EBITDAも増加するので、EBITDA倍率も異常なまでに低下しました。
これがEBITDA倍率の”死角”です。
とは言え、このケースではPERの”死角”でもあるので、EBITDA倍率が優位な状況は変わりません。