経営コンサルの割安株分析

現役経営コンサルタントが中長期保有を前提に中小型株を中心に分析。自身の専門性や調査・分析範囲(能力)に限界がある中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との意見交換を行うことで、割安株への投資を実現することが目的です。

第一工業製薬(4461)企業分析②

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さて、前回の続きです。
(前回行いました第一工業製薬の分析はこちらになります。)

www.con-invester.com

 

株価

株価は2012年3月から2014年7月で5倍にまで上昇しました。

その後ズルズルと値を下げますが、昨年末から再び上昇しています。

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株価は上昇していますが、PERは競合と比較して割安な水準と言えそうです。
(日華化学の異常値を抜いた競合平均が18.3倍)

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市場動向

前回の分析にて市場(需要)は安定的と書きました。

つまり界面活性剤市場全体を見ると、10%や20%レベルで拡大することはなく、成長率は数%レベルと言われています。

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しかしながら、国別を見るとアジアを中心とした新興国(アフリカ、南米)が抜群の伸びが期待されています。

これは生活水準の向上で、これまで必需ではない「界面活性剤なんて使わなかった(使えなかった)」層が顧客への転身するためです。

 

戦略志向

第一工業製薬の戦略は「ニッチ高シェア」です。

これは小規模プレーヤーの鉄板戦略です。

勿論、技術力等の差別化要因があってこそなのですが、特定分野に絞り、その領域で高シェアを取ることで、業務の効率化や顧客ニーズの取得機会増大等のメリットを享受することができます。

IR資料によると、これまで第一工業製薬の製品の6割が代理店経由での販売で、顧客情報をうまく取得できてなかったそうです。

そのような状況中、社長自ら取引先に訪問し、直接ニーズを聞き出す等、「ニッチ高シェア」実現に向けて大胆に動き出しています。

 

前回も言及しましたが、第一工業製薬の利益は原油(ナフサ)価格に大きく依存しています。

「ニッチ高シェア」が実現すれば自社の価格コントロールができるようになるので、原油価格依存経営から脱すことができるはずです。

従って、現状はまだまだ汎用品を提供しているに過ぎない状況です。

ここから「ニッチ高シェア」企業に脱皮できるかはもう少し見守る必要がありそうです。

 

一方、海外展開という視点で見た時、第一工業製薬は競合に大きく遅れを取っています。

競合各社が新興国に拠点を設置し、積極的に開拓する中、第一工業製薬は「海外マーケティング強化」「留学制度を新設」等、次元の違うステージにいます。この辺が将来的なネックになってくるかもしれませんね。

 

目標株価

最後に簡易的ではありますが、目標株価(ターゲットはFY19)について書いておきます。

現在の一株当たり純利益が47.4円、株価が467円(2017/5/8時点)、PERが9.9倍

利益成長率とPERの感応度分析結果が下記になります。

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利益成長率は、EPSのCAGR(FY11-17LTM)8.3%と、ナフサ価格が2012年水準まで上昇した場合の上昇率-13.7%、ゼロ成長の3ケース
(ナフサ価格に依存した収益構造を変革できない場合として考慮しておく必要があると思います)

PERは、東証一部平均の16.1倍を最大とし、最大値と現在値の平均値、現在値の3ケース

最大ケースでは、971円と算出されました。

 

PERが比較的割安なので、仮に利益成長がマイナスでも、現状の株価が5%程上回る試算となりました。

但し、上述の通り「ニッチ高シェア」を実現できるかというのがキーになってくるので、そこを見定めないまま投資はギャンブル要素が強い気がします。

なので、しばらくは第一工業製薬のROSとナフサ価格の連動を見守っていくという感じでしょうか。