さて、前回の続きです。
(前回行いましたウエストホールディングスの分析はこちらになります)
戦略と競争優位性
ウエストの戦略は「日本版シュタットベルケ」であり、それを可能にし、競争優位性を築いているのが「ネットワーク力」です。
日本版シュタットベルケ
「シュタットベルケ」とは、ドイツ各地で地域エネルギーと生活インフラの整備・運営を担う小規模の地域密着型事業体のことだそうです。
ウエストの場合は、全国各地の自治体と強力なタッグを組み、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーを提供しています。
公共サービスは地域性があるので、地域密着でニーズを吸収しながら最適なサービスを提供していくことで、強固な参入障壁が築けるようです。
ネットワーク力
上記「シュタットベルケ」として事業展開を可能にしているのは、2つの「ネットワーク」です。
工事会社や販売会社、メーカー等の「太陽光発電に関するネットワーク」、地方自治体をはじめ、地方銀行や不動産仲介等の「地域に関するネットワーク」です。
ステークホルダー全員がハッピーになるような事業環境を整えることで、敢えて仲良しグループから抜けようとするインセンティブはなくし、仲良しグループ間でお金が回るようにネットワークが構築されています。
まるで中国人の商習慣のようですね。
これは、突如としてやってきた余所者が仲間に入れて貰えないことを意味します。(=高い参入障壁)
株価
2013年10月に高値を付け、現状はその半値以下で推移している状況です。
とは言え、PERは30倍と高騰していた2012年から大きく下げて、現状は8.6倍という水準です。
やはり、「固定価格買取制度の運用見直し」というのが投資家にネガティブな印象を与えているようです。
固定買取制度の意味合い
元々、「固定価格買取制度」は再生可能エネルギーの促進を目的に、「絶対この価格で買い取ってやる!」という約束でした。
ところが、資本主義の常でしょうか、お金の臭いを嗅ぎ取ったプレーヤー達が多数参入した結果、供給過剰という事態を招きました。
「このままでは買取に過剰にお金も掛かるし、停電の発生リスクも高まるな・・・」ということで、運用見直しの大発表を行ったわけです。
(需要に対して供給が多すぎても、停電の発生など、電気の安定供給に支障をきたす恐れがあるそうです)
そこで想像を巡らせてみると、2つのことが言えると思います。
①「需要と供給が一致するタイミングで価格は一定になる」、②「価格低下(=市場縮小)によりプレーヤーの淘汰が進む」
ウエストホールディングスに当てはめた場合、①売上高はこのまま下げ続けることはない、②「ネットワーク力」という競争優位性に基づき当該市場で生き残ることができる。ということが想定されます。
目標株価
最後に簡易的ではありますが、目標株価(ターゲットはFY19)について書いておきます。
現在の一株当たり純利益が103.0円、株価が789円(2017/4/28時点)、PERが7.7倍
利益成長率とPERの感応度分析結果が下記になります。
利益成長率は、EPSのCAGR(FY12-17LTM)20.2%と(FY14-17LTM)-16.4%、ゼロ成長の3ケース
(どこで下げ止まるか分からない中で、直近最高益であったFY14からの減少率を考慮すべきと考えています)
PERは、東証JQS平均の17.5倍を最大とし、最大値と現在値の平均値、現在値の3ケース
最大ケースでは、3,123円と算出されました。
利益成長なしでも、PERが上がるだけで株価は2倍以上になる試算です。
現在ウエスト株が投資家から避けられているのは、やはり運用見直しによる先行きの不透明感だと思います。
一方、前述の通り、近いうちに価格は安定し、生き残ったものが利益を享受する時代に突入すると想定されます。
このようなシナリオが確認され次第、PERは切り上がっていくと想定されるため、1,800~2,000円を目指す展開になると予想しています。