さて、前回の続きです。
(前回行いました大塚家具の分析は下記になります。)
市場動向
住宅着工戸数の減少、婚礼家具の衰退、少子化による子供向け家具の低迷などを背景に、国内の家具消費額は縮小傾向にあります。
元々、家具は買い替え需要が比較的低く、家具をメインで扱う大塚家具にとっては厳しい事業環境となっています。
消費額の半数を占め、横ばいで推移している家事雑貨や、買い替え需要の比較的高い寝具類までを取り扱うニトリやイケアは、製品ラインナップ面からも有利であることが分かります。
業績が低迷している大塚家具を尻目に、ニトリは絶好調です。
市場環境は言い訳にはなりませんね。
戦略志向
このような市場環境の中、大塚家具が掲げる打ち手は①製品ラインナップ拡充(高+低中)、②専門店・小型店の多店舗展開の2つです。
①製品ラインナップ拡充
IRでも再三強調されているように、低中価格に転換したのではなく、あくまで「ラインナップの拡充」
店員が顧客について回る接客方法も、なくしたのではなく、必要とされない場合はついて回らないだけ。
家具の主要購入場面として、「新生活を始めるタイミング」があり、若者(20~30前半)需要のボリュームが一定数存在すると想定されます。
そして、その若者に合わせる形で、「低中価格帯製品の取扱い」 + 「接客方法の見直し」を行った形です。
一方、マーケティング戦略の視点で考えると、今まで大塚家具で購入していた顧客(=高価格帯の家具を買う層)にとって、丁寧な接客と高級感のある店舗空間という「購入環境」は、大きな価値であったことは間違いないと思います。
売り場を分けたところで、高価格帯と中低価格帯を融合させた空間をデザインできるわけではありません。
現に消費者からは「安っぽくなった」と嫌煙するコメントも見られています。
(実際に高価格帯の製品が変わったわけではないのに)
②専門店・小型店の多店舗展開
もう一つの取り組みが、首都圏における専門性の高い小型店(ソファー専門店やブランド特化型店等)の展開です。
一方で、専門店に特化するのではなく、それらを集積した旗艦店も引き続き運営していくようです。
専門店で認知度を獲得し、旗艦店に送客するスキームを志向しているのでしょうか?
それともただ単純に上記マトリックスを全方位的に攻めていくことを志向しているのでしょうか?
価格帯も然り、店舗形態(専門/総合、小型/大型)についても、自社の強みを明確にした上で選択と集中ができていない印象を受けます。
今後の見通し
あくまで個人的な意見ですが、今の大塚家具の戦略は全く絞りが効いておらず、「短期的に効果の出そうな事は何でもやります」状態に映ります。
前回も記載しましたが、お家騒動に続き、株主からの圧力が掛かる中で、長期的な視点を持って腰を据えた戦略の策定および実行が困難になっていると想定されます。
このような状況の下、久美子氏が創業家であるという点も含めて考えると、MBOという選択肢も有力な選択肢であるのではないでしょうか。
直近だと、同じ様な背景からアデランスがMBOを実施しています。
以上から、MBO狙いで買い持ちしておくのは1つのオプションですが、このまま「短期的に効果の出そうな事は何でもやります」状態が続けば、業績の改善は遠のく一方であり、当然株価も切り下がっていくことが予測されます。